2012/03/10

TCM06 : 思考のスナップショットをとる

TCMのような思考ツールを使う時には、考えたいテーマに新しいアイデアが生まれることや、考えが整理されることを期待しているわけです。

たしかにそうした成果を得るときもありますが、TCMを書くたびに華々しい成果をあげているわけではありません。
書く前に期待したような、新しいアイデアを得られずに書き終わることもあるのです。

それでもTCMを書き続けるわけですが、それは「もしかしたら革新的なアイデアを思いつくかもしれないから」などとバクチをうっているわけではないのです。

Endless routes, Patagonia


TCMを書くもっとも根底にある目的は、考えたいテーマついて現在の状況を把握することです。
現在の状況をありのまま把握できれば、次のアクションはずっと生まれやすくなります。

絵が上手い人は、手に技術があるのではない。目が精確に形を捉えていて、手が描く線の狂いを感知できる。つまり、「上手い」というのは、ほとんどの場合、「測定精度の高さ」なのである。たとえば、料理の上手い下手は、最終的にはその人の舌の精度に行き着く。

ラジコン飛行機の操縦が上手いか下手かは、飛行機の姿勢をいかに精確に捉えられるか、という目で決まる。咄嗟に舵が打てるか、適切な舵が打てるか、といった問題は大したことではない。工作が上手いかどうかも、常に材料を精確に測定できるか、にかかっている。狂いのない飛行機を作れる人は、小さな狂いを見ることができる人である。精確な位置に穴があけられる人は、精確な位置に罫書きができる人だ。

もう少しわかりやすく説明すると、「どんなとき、どうすれば良いか」といった知識は誰でも簡単に学べるが、一番難しいのは「今がどんなときか」を感知することであって、これは知識としては学べない。現在の位置や状態を的確に把握できれば、もう「上手い」も同然なのである。

MORI LOG ACADEMY: 「上手い」とは何か

何かを考えるときに、「今がどんなときか」はそのテーマに対して答えがあるかどうかで感知できます。
「どうすればよいか」といった考えがあればすぐに答えられますし、なければたちまち答えに詰まるわけです。

そして、TCMは「今がどんなときか」を教えてくれる数少ないツールのひとつなのです。

TCMを書くとき、まず考えたいテーマを中心に書きます。
そこから矢印を伸ばして、その上にのせる「それは何をどうすること?」などの問いかけを考えます。それから、その質問の答えを書いてマルで囲みます。

この「質問する」→「答える」を繰り返していくわけですが、いずれ答えられない問いにぶつかります。
つまり、その部分より先の知識や考えが、現時点で頭の中にないと分かるのです。

なんとなく考えがまとまらないと悩むのではなく、はっきりと「ここがわからない」と分かるわけです。

自分の中に、今この部分の答えがないのだと分かれば、改めてそのポイントを取り出してTCMを書くとか、本を読んで知識を集めるといったアクションをとることができるのです。